同窓生の素顔

千葉県立千葉高等学校を卒業して、東京近辺に働く、同窓生の素顔を紹介しています。

 

【長島弘明(東京大学教授、日本古典文学)昭和47年卒】
現在、東京大学で江戸時代の文学を教え、また研究しています。特に、上田秋成という江戸時代中頃の小説家の研究を長く続けています。怪談小説の中で一番有名な、あの『雨月物語』の作者です。先日は、岩波文庫で『雨月物語』を出しました。またラジオの放送大学では、今『上田秋成の文学』が放送中です。
日本の古典文学の世界に深入りしたのは、今から思えば、千葉高で田所忠雄先生や渡辺誠治先生から受けた古文の授業が、無性に面白かったからではないだろうか、そんな風に考えています。『雨月物語』が入っている岩波日本古典文学大系『上田秋成集』は、千葉高からの帰り道、市内の本屋さんで買い求めたもので、その後ずっと私の机の傍らにあります。千葉高の恩師による国語の授業と、当時の定価八百円の『上田秋成集』が、ドラえもんのどこでもドアならぬ、私にとっての古典文学のどこでもドアだったのだと、その頃のことがなつかしく思い出されます。

 

【渡辺裕 東京大学大学院人文社会系研究科(美学芸術学・文化資源学)昭和47年卒】
高校の頃は「クラシック音楽=命」の少年だった。文化祭のときにピアノ演奏会を開いて、当時最先端の「現代音楽」もプログラムに入れ、悦に入ったりしていた。他の生徒からは嫌味な野郎だと思われていたことだろう。その後は音楽の実技ではなく研究の道にはいったが、いつしか関心は音の文化全体に広がり、駅の発車メロディとか、スポーツのラジオ中継の歴史などというネタで講義をしたりもしている。そうなってみると、そういうおもしろいことが他にもいろいろ体験できたはずなのに、「クラシック」以外にはほとんど目もくれなかった高校時代を思い返すにつけ、ソンしたなあという後悔の連続である。先日、同期の仲間で集まったときに、私が文化祭の演奏会の時に作ったプログラムを保存していて、持ってきてくれた人がいたのには驚いた。そういう同期の仲間との交流が時計を巻き戻してくれ、今になって自分の人生の欠落を埋めてくれる、そんなことを実感している。

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